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巽社長インタビューVol.6「23万円と自転車で始めた会社経営」
起業というと華やかなイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、株式会社マザープラス代表取締役社長・巽房子の起業の始まりは、23万円と自転車でした。7年間自分の給料はゼロ、「ママのままごと」と言われ続けた12年間——。それでも走り続けた経営のリアルを、飾らない言葉で語っていただきます。
小さな次男を自転車に乗せて、法務局へ
——編集部
株式会社マザープラスの設立は2008年。法人化を決めた理由を教えてください。
——巽社長
ベビーマッサージ教室を個人事業で2年やって、500人ぐらいの生徒さんが通ってくれるようになっていたんです。その中で、ママたちのすごいポテンシャルに気づいた。赤ちゃんを抱っこしているけれど、ベールの下には知識も技術もある。「なぜこのポテンシャルが社会の生産人口に入れてもらえないんだろう」と、すごく疑問に思ったんですね。
ママたちの力を社会につなげたい。でもそのためには、企業と対等にお付き合いできる立場が必要だった。個人事業主のままでは、特に大企業とは口座すら開けない。直接のお取引ができないんです。
だから1日も早く法人にしようと思った。上場企業と一緒にお仕事をさせてもらって、お母さんたちの能力を開花させるような場をつくりたかったんです。
——編集部
法人設立の日のことを覚えていますか?
——巽社長
忘れられないですよ。23万円を持って、次男を自転車に乗せて、法務局まで40分ぐらいかけて走りました。電車代ももったいなかったから。
行政の無料相談窓口があって、そこのおじいちゃんにずっと書類の書き方を教えてもらったんです。あまりにも何度も通うものだから、最後にはそのおじいちゃんが書いてくれていました(笑)。
2008年5月8日に株式会社マザープラスを設立しました。上の子が4歳半で、下の子が2歳の時です。
7年間、自分の給料はゼロだった
——編集部
法人化してすぐに経営は軌道に乗りましたか?
——巽社長
いえ、全然です。法人にしてから、自分のお給料がもらえるまで7年ぐらいかかっています。ずっと0円でした。
スタッフには薄いながらもお支払いしていましたけど、自分の分はなし。それでも、スタッフを雇用しなければ回らないぐらいの規模のことをやっていたから、人件費は出さないといけない。個人事業主の時の方が、正直10倍ぐらい稼いでいました。
会社にしたら何もしなくてもかかる税金がある。売上がなくてもかかるんです。甘くはなかった。でも、甘くないからこそ、やりがいがあった。
数字で言えば、年商1,000万円ぐらいないと法人として1年で潰れてしまう。私はちょっと無謀すぎたかもしれません。でも、数字に囚われるよりも、「お母さんたちの社会的立場をイノベーションできる」と信じ切っていた。「私がやらなかったら誰がやるんだ」という使命感で、走り続けていたんです。
——編集部
それだけ厳しい中で、法人化した効果はありましたか?
——巽社長
ありました。法人にして2年ぐらい経った頃に、本当に大企業からオファーの電話が来たんです。「なんでうちを選んでくれたんですか?」と聞いたら、「こういう系の会社で株式会社にしているのは、マザープラスしかなかったからです」と言われたんですよ。
やっぱりそうだったのか、と。思っていたことと、企業が求めているものは一致していたんだなと確信しました。1日も早く法人にした判断は間違っていなかった。
会社を続ける年数は、自分の通信簿みたいなものなんです。1年続けたら1年分、3年続けたら3年分の信用がつく。10年続く法人なんて、本当に10パーセントあるかないか。だからこそ、続けることに意味があるんです。
「ママのままごと」からの脱却
——編集部
「ママのままごと」と言われた経験があるそうですね。
——巽社長
18年マザープラスをやってきて、最初の12年ぐらい、ずっと言われ続けました。「巽さんのやってることは、ママのままごとやろ」って。スタッフも雇って、事務所も借りて運営していたのに、ままごとにしか見えなかったんでしょうね。
でもね、言われるからには、そう見えているのが現実なんだと素直に受け取りました。「分かりました。脱却するためにもっと頑張ります」って。
それで徹底的にこだわったのが、スピードと品質です。
——編集部
具体的にはどんなことを?
——巽社長
まずレスポンスの速さ。LINEやメールが来るのは、相手がレスポンスを欲しいから来ているんです。だから、誰よりも早く返す。人の期待を超えるぐらいのスピードで返す。
ママが起業する時って、1つフィルターがかかっているんですよ。「レスポンスが遅い」「仕事が遅い」——それを「ママだから」で片付けられてしまう。私は、そのマイナスイメージを絶対につくりたくなかった。
だからマザープラスは、社内の会話もすごいスピードで回っているし、資料1つとっても「どこの広告代理店ですか」と言われるぐらいのクオリティでつくる。「ママだから」に甘えるんじゃなくて、「こんな配慮の効いたすごいことができるんだ」と思ってもらえるように。それを会社全体に徹底的に浸透させてきました。
「ママだから」というフィルターがある以上、そこに甘えたら終わりなんです。「何くそ」と思いながら、男性社会にぐわっと入っていった。その積み重ねが、今の信頼につながっていると思います。
一にも二にも、継続
——編集部
20年間走り続けてきた巽社長が、最も大切だと思うことは何ですか?
——巽社長
一にも二にも継続です。
会社を登記した日に、こう決めたんです。「もしこの会社が10年続いたら、もう一歩ステージを上げよう」と。そして実際に10年続けて、今は東京にも拠点を置いて、全国、さらには海外にも活動を広げています。
1年目はしんどいかもしれない。でも2年目は全然違う景色になる。5年ぐらい経ったら、もう一つ違う景色が見える。多分、お付き合いするクライアントさんも変わってくる。
続けていれば、必ず次のステージが見えてくるんです。大事なのは、やめないこと。困り事や悩みを「どうにかしたい」と思う気持ちを、どうやったら継続して形にできるか——それを考え続けることが、夢を現実にする唯一の方法だと思っています。
次回(Vol.7)予告: 忙しく働くママの背中を、子どもたちはどう見ているのか。「寂しい思いをさせた」と葛藤しながら走り続けた巽社長が、息子たちの成長を通じて気づいたこと。次回、「子どもが見ている"ママの背中"」をお届けします。
執筆者プロフィール
ママになった女性、ママになる女性、全ての女性にもっともっと元気になってもらいたいと、ママの立場に立った様々な企画や事業を展開しています。 子連れで楽しめるおけいこやイベント、ママの参加型マーケティング事業、さらにはママ向け求人情報など様々な事業の中で、ママと社会との架け橋になる役割を目指しています。 motherにたくさんのplusが加わる事で、ママの素敵な笑顔が増える、そして社会参加の機会をマザープラスは皆さんと一緒に作っていきたいと思います。

